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町長施政方針/行政報告

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町民一人一人の復興"と"町の復興"をめざして

町長施政方針/行政報告

令和5年 施政方針

  令和5年第1回双葉町議会定例会が開催されるにあたり、所信の一端を申し述べ、議員各位並びに町民の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。
 
「東日本大震災双葉町追悼式」について、避難者が多く暮らすいわき市内で平成24年から開催し、令和3年からは双葉町産業交流センターで開催してきたところです。しかし、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から10年以上が経過し、ご遺族の方の高齢化などにより出席する方々が年々減少していることや、ご遺族の多くが町外で暮らしている現状等から追悼式の在り方を検討してまいりました。そして、ご遺族にもご意見を伺ったうえで、ご遺族以外の方も広く追悼できる形式が望ましいと判断したことから、今年は、3月11日の午前9時から午後4時まで、双葉町産業交流センター内に「献花による追悼をささげる場」を設け、ご遺族に限らず広く自由に献花をいただくことにしました。なお、3月11日午後2時46分に同会場にて黙祷を捧げ、震災により尊い命が失われた方々の御霊に対し、哀悼の誠を捧げてまいります。
 
 新型コロナウイルス感染症について、はじめに感染対策や医療現場で献身的にご尽力をいただいている医療関係者の皆さま並びに、双葉町民へのワクチン接種にご理解とご協力をいただいている避難先の各自治体に心から感謝申し上げます。
 また、町民の皆さまには、日ごろより感染予防対策の徹底に取り組まれるとともに、ワクチン接種にご協力を賜り感謝申し上げます。お陰様で全国並びに福島県の新規陽性者数は、1月中旬以降、減少傾向が続いております。
 政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症を感染症法上の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行することを決定し、マスクの着用についても、3月13日以降、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることとした一方、事業者が感染対策上または事業上の理由等により、利用者や従業員に対し、マスクの着用が許容されるなど、マスク着用の考え方が見直されました。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が減少傾向にある一方で、インフルエンザの患者が増加傾向にあります。どちらも感染対策は同じですので、町民の皆さまには引き続き基本的な感染対策の徹底にご理解とご協力をお願いします。

 さて、本町は、昭和26年4月新山町と長塚村の合併により誕生し、70年余りが経過し、昨年、特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されたことから、双葉町産業交流センターにおいて「双葉町合併70周年記念式典」を挙行し、先人が築いてきた歴史と偉業を振り返るとともに、12年前の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故からの復興状況を振り返ったところであります。
 私は、町長就任時から「復興」は震災前に戻すということではなく、将来の双葉町のあるべき姿を描くものとして、取り組んでまいりました。震災により失ったものは筆舌に尽くしがたく、計り知れないものがありますが、残された町の良さを活かしながら、5年後あるいは10年後の双葉町のあるべき姿を見据え、未来志向により施策を展開していくことが、真の「復興」に繋がるものと考えております。本年1月にイギリスを訪問しましたが、世界はポスト・コロナを見据えて動き出しております。今後、双葉町とイギリスの子どもたちとの交流を進めるとともに、国際感覚を身につけ、双葉町の未来を見据えた復興に取り組むことのできる人材を育ててまいりたいと考えております。

 復旧・復興に欠かすことのできない財源の確保について、昨年の12月16日に自由民主党、公明党において「令和5年度税制大綱」が決定されました。大綱では、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置に関し、「東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確保する」と明記されてはおりますが、双葉町は、震災と原発事故という複合災害により、インフラの整備、町民の生活再建、産業・生業の再生など様々な課題があり、長期にわたる財源の確保が不可欠であります。今後も福島県並びに関係自治体との連携により、大綱を踏まえ復興・再生に向けた財源確保について、国並びに関係機関に強く要望してまいります。
 
 特定復興再生拠点区域外の除染について、政府は去る2月7日、拠点区域外に「特定帰還居住区域」を新たに設定し、帰還する住民の日常生活に必要な宅地、道路、集会所、墓地などを国費で除染を進めるため、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律を閣議決定しましたが、この度、政府は、双葉、大熊両町の一部地域で令和5年度に先行除染を始めることを明らかにしました。双葉町においては、JR双葉駅に近い三字行政区と下長塚行政区の拠点区域以外の一部で先行して除染を行うことを国に求めてまいります。双葉町は当初から帰還困難区域全域の除染と避難指示解除を国に要望してきたところであり、この度の除染が点や線的な除染に終わらないよう、引き続き強く国に要望してまいります。

 高速道路の無料措置について、原発事故の警戒区域に居住されていた方を対象に無料措置が、令和6年3月31日まで延長され、現在利用している「ふるさと帰還通行カード」を引き続き利用できることになりました。今年の秋以降にカードの更新が予定されておりますが、具体的なカード更新の時期や手続きの詳細等については、今後示されることになっています。高速道路の無料化措置については、双葉町の場合、旧避難指示解除準備区域と特定復興再生拠点区域を除く町全体の約85%が未だ帰還困難区域であることや、町民の殆どが全国各地に避難している状況に鑑み、町民の皆さんの生活再建やふるさとへの帰還に必要不可欠であることから、引き続き国並びに関係機関に強く要望してまいります。

 原子力損害賠償に係る「中間指針第五次追補」の決定について、原子力損害賠償紛争審査会において、昨年の3月に最高裁判所の決定により確定した判決等に係る調査・分析等の最終報告や現地調査を踏まえ、指針の見直しに向けた議論が行われ、9年ぶりに中間指針の「第五次追補」が決定されました。
 双葉町は、東京電力に対して本町の被害の実情にあった賠償を繰り返し求めてきたところであり、今回の「追補」では、一定程度反映されたものと考えております。
 今後も風評被害等、損害がある限りは、賠償がなされるべきであり、県並びに関係市町村と連携を図りながら国、東京電力に働きかけてまいります。
 また、東京電力には「指針」が示す損害額の目安が賠償の上限ではないことを深く認識するとともに、被害者の視点に立ち、誠意を持って対応するよう強く求めてまいります。

 東京電力ホールディングス株式会社からの福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請に係る事前了解について、東京電力から令和3年12月20日付けで提出があった福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水放出設備及び関連施設)に係る事前了解について、廃炉安全監視協議会、環境モニタリング評価部会及び安全確保技術検討会において、計画の内容を確認し、報告書としてとりまとめられました。
 そして、この報告書を踏まえ、令和4年8月2日に私と大熊町長同席のうえ、内堀福島県知事から意見書を付して東京電力に事前了解願いに対する回答書が手渡されました。
 意見書の内容として、1点目は、技術検討会がとりまとめた「ALPS処理水に含まれる放射性物質の確認」などの8項目の要求事項について、確実に実施するとともに、その取り組み状況について報告すること。
 2点目は、ALPS処理水の放出量を抑制するためには、汚染水発生量の更なる低減が重要であることから、フェーシングや凍土遮水壁などの重層的対策と建屋内滞留水処理を着実に進めるとともに、原子炉建屋等への地下水や雨水等の抜本的な流入抑制対策に取り組むこと。加えてALPS等から発生する汚泥等の二次廃棄物について、一時保管する廃棄物保管庫の建設を進め、周辺地域への線量影響を低減させるとともに、安全な処理・処分に向けた技術的な検討を進め、県外搬出の取組を確実に進めること。
 以上2点についてしっかりと対応するよう求めました。
 また、私から、双葉町は特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、ようやく町への帰還を果たすことができるようなったことから、東京電力においては、今後、当町内でも町民が現実に生活を始めることを認識し、引き続き福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉作業が計画的に進むよう取り組んでいただきたい旨を申し入れました。

 双葉町復興まちづくり計画について、来る3月11日で東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から12年が経過いたします。双葉町の復興・再生は、これまで双葉町復興まちづくり委員会の意見、提言を基に、また、町民の皆さまなどからいただいたパブリックコメントを参考に「復興まちづくり計画」を策定し、取り組んでまいりました。
 平成25年6月には「第一次計画」を策定し、避難されている町民の生活再建や双葉町の復興のあり方に係る検討を進めてまいりました。平成28年12月には「第二次計画」を策定し、特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けて除染やインフラの復旧、生活環境の整備を進めてまいりました。
令和4年6月に策定した「第三次計画」は、これまでの復興まちづくり計画で掲げた双葉町の復興まちづくりの方針を踏襲しながら、特定復興再生拠点区域における避難指示解除以降の5年以内に行う「生活環境」「産業・エネルギー」「医療・健康・福祉・介護」「教育・子育て・歴史・伝統・文化」「きずな・結びつき」の5つの分野別基本施策をまとめ、短期・中期・長期の明確なビジョンでの復興まちづくりを示す計画となります。
また、「第三次計画」に基づく5つの分野の基本施策に係る具体的な取り組みにつきましては、復興町民委員会、有識者のご意見をいただきながら、令和5年度から令和7年度に実施する主要事業をまとめた「実施計画」を今月末に策定いたします。
 これまで厳しいコロナ禍の最中(さなか)であっても、双葉町は復興へのスピードを緩めることなく、各種事業・施策の具現化に取り組んでまいりました。令和5年度を「復興加速化元年」と位置付けし、「第三次計画」においても一人でも多くの町民の皆さんが帰還できる環境整備に一層のスピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。

 令和5年度に重点的に取り組む施策について、先ほど申し上げましたが、令和5年度を「復興加速化元年」と位置付けし、特定復興再生拠点区域の避難指示解除に伴い、一人でも多くの町民の皆さんの帰還や双葉町に関心を持っていただいている方や、事業者の移住、また町民のきずなを深めるなど各施策に取り組むことを念頭に予算を編成してまいりました。

 生活環境について、特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除後の町民の帰還支援の取り組みについては、住宅清掃、住宅再建、合併浄化槽設置、移転費用に関する補助金を交付する一方、地区の安全安心を図るため、引き続き防犯・防災パトロールを行うとともに、防犯灯を復旧してまいります。また、町消防団第一分団、第二分団の屯所については、現在、整備中ですが、これに合わせて両分団に新たに消防ポンプ車両を購入配備し、防火活動に取り組むとともに、火災や地震のほか、自然災害に対応できる体制を整備してまいります。
 さらに、役場機能が町内に戻ったことから、本庁舎内で災害対策本部機能が十分に発揮できるように災害対策本部運営マニュアルを作成してまいります。
 
 商業施設については、現在、浪江町との共同で移動販売を実施しておりますが、より買い物環境の利便性の向上を図るため、JR双葉駅東側周辺に町有地を活用した公設民営の商業施設整備に向け、令和5年度には事業者公募・施設設計業務を行い、令和7年度オープンを目指し、双葉駅東側地区の再生に向けた軸になる施設となるよう進めてまいります。
 双葉駅西側地区に整備しております町営住宅86戸について、先行の25戸が昨年10月に完成し、入居が始まりましたが、昨今の社会情勢の大幅な変化により資材調達などが影響を受け、基盤整備工事に遅れが出たことにより、一部の駅西住宅の入居予定時期に遅れが生じております。引き続き、状況を注視しながら工事関係者と連携して、これ以上遅れが出ないよう進めてまいります。
 移住定住対策については、まちづくり会社であるふたばプロジェクトを窓口とした空き家・空き地バンクを活用するとともに、移住定住者を受け入れる体制整備を強化してまいります。
震災により損傷した町道等のインフラについては、災害復旧工事により改修に努めてきたところですが、帰還者並びに一時帰宅者の安全確保のため、補修を計画的に行うための修繕計画を策定するとともに、きめ細かな道路の維持管理と補修工事に努めてまいります。
また、放射線による健康不安を払拭するため、避難指示解除区域及び帰還困難区域の放射線量を測定、公表するとともに、特定復興再生拠点区域外の帰還困難区域の避難指示解除に向けた取り組みを進めるため、引き続き放射線量等検証委員会を開催し、当該区域の放射線量の低減状況を検証してまいります。

 産業について、中野地区復興産業拠点内に立地する企業については、20件、24社との立地協定を締結しております。今後も中野地区復興産業拠点に係る基盤整備事業を実施し、企業立地を一層促進するため、企業誘致活動を推進するとともに、立地締結企業と地元企業同士の連携強化を図ってまいります。
 
 農業について、営農再開に向けて6地区の農地保全管理組合の協力により、引き続き福島県営農再開支援事業補助金を活用して農地の保全管理を行ってまいります。
 上羽鳥地区については、営農再開を目指して、用排水路や暗渠(あんきょ)排水等の整備をする基盤整備事業を行うため、地権者説明会を行うとともに、測量設計業務も行ってまいります。
 下羽鳥・長塚地区については、ほ場整備事業に対する地権者の皆さまの理解促進に努めるとともに、昨年に引き続き、管理耕作によるブロッコリー栽培の支援を行ってまいります。
 さらに、双葉町全体の用排水系統を図化するとともに、営農再開に向けて水利施設の整備を行います。また、農作物や農業施設に害を及ぼすイノシシの捕獲を強化するとともに、ニホンザルの生息状況を調査し、対策を講じてまいります。

 医療・健康・福祉・介護について、一次医療機関として双葉町診療所が2月1日に開所したところですが、今後、県立大野病院の後継として福島県が整備する二次救急医療機関と連携しながら、帰還される方並びに移住される方の医療に対する安全・安心を確立するとともに、健康不安を払拭するため、医療体制づくりを行ってまいります。
 また、介護予防事業として、ICTを活用した作業療法士による介護予防事業を行ってまいります。
 さらに予防対策としては、町民の健康増進のための総合健康診査を行うとともに、新型コロナウイルス感染症用のワクチンを含めた感染症で重篤化しにくくすると言われているワクチン接種のための予防接種を行ってまいります。

 教育・子育て・歴史・伝統・文化について、まず学校教育は、平成26年いわき市で学校を再開してから、9年目を迎えました。
 仮設校舎において、少人数による学級編成により充実した幼稚園、小、中学校の教育を行っているところです。本来なら避難指示の解除とともに、双葉町での学校再開が望まれるところですが、若い世代の町民の帰還が未知数であったことから、町内での学校再開については慎重に考えてきました。しかし、双葉町の復興については、将来を担う若い世代を抜きには考えられないことから、双葉町での学校再開は、欠かすことができない最も重要な課題と捉え、学校設置検討委員会を設け、町内での学校再開に向けて取り組むことといたしました。
 子育て支援としては、今年度は令和6年度に「第3期子ども・子育て支援事業計画」を策定するための基礎調査を行ってまいります。また、町内居住者の区域外就園に伴い「幼児教育・保育園実施負担金」に対する補助をしてまいります。さらに出産と子育てを応援するため、国及び県の交付金を活用して、経済的支援を行ってまいります。
 歴史、伝統、文化については、神楽などの民俗芸能、自治会による盆踊り、相馬流山踊りなど、伝承・保存するための補助をしてまいります。
 また、「国指定史跡 清戸廹横穴」については、震災後も温・湿度測定調査などを行い、管理を続けておりますが、専門家から保存・活用のための検討及び指導を受け、継続して適正な管理をしてまいります。
 また、町内の歴史的建造物である旧田中医院を改修し、交流施設として整備してまいります。
 民家に保管されている地域の歴史や文化を伝える貴重な資料となる古文書・生活道具等については、被災家屋の解体・撤去により消失の懸念があることから、筑波大学の協力を得て被災家屋からのレスキューを継続的に行い、整理・保存を行ってまいります。

 きずな・結びつきについて、情報提供・広報、広聴の充実を図るため、「町公式ホームページ」や「広報ふたば」、「ふたばのわ」を発行するとともに、「広報ふたばダイジェスト(動画版)」、「ニュースふたば」、ドローンを使って「空からの映像」等を制作し、町民相互のきずなの維持・発展に努めてまいります。
 また、帰還・再生加速事業として平成26年からタブレット端末運用支援業務を行ってまいりましたが、タブレット端末での情報提供が終了となることから、個人のスマートフォンやタブレット端末に「ふたばアプリ」をダウンロードしていただくよう「ふたばアプリ運用支援業務」を行い、交流会等でアプリのダウンロードや利用について啓発しながら町民相互のコミュニティの充実を図ってまいります。
 また、帰還並びに移住された方の行政区の垣根を越えて、各種教室や各種芸能関係の練習場所及び道具保管場所等として使用するため、新山公民館を修繕してまいります。
 一方、避難指示の解除により、帰還される町民と帰還を希望しない町民との心のつながりが希薄になることが心配されるため、スポーツ、芸術、文化、芸能活動、ダルマ市などの各種イベントなどを通して、町民同士の絆を一層強固なものにする必要があると考えております。さらに町体育協会や総合型地域スポーツクラブ・双葉ふれあいクラブの活動に対する支援を行うとともに、地域スポーツを通して町民の交流の場を確保してまいります。

 以上、現在までの復興まちづくり計画の取り組みとその成果並びに令和5年度の町政に臨む私の所信の一端と町政の基本方針を述べましたが、町政運営にあたりましては、引き続き議会並びに町民の皆さまとの対話を重視するとともに、双葉町復興まちづくり計画(第三次)に基づき、特定復興再生拠点区域の避難指示解除以降の具体的な施策を展開するとともに、さらなるスピード感を持って双葉町の復興・復旧に職員一同全力で取り組んでまいりますので、議員各位並びに町民の皆さんの一層のご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。
 以上申し述べまして、令和5年度における施政の方針といたします。


 >>施政方針・行政報告の様子は「双葉町公式YouTubeチャンネル」で配信しています。