本文にジャンプします
メニューにジャンプします

令和2年度町長施政方針_令和2年4月1日

TOOLCLOSE
MENUCLOSE
町民一人一人の復興"と"町の復興"をめざして

令和2年度町長施政方針_令和2年4月1日
(2020年4月1日更新)

町民の皆さまへ

 

まず、昨年12月に中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症についてでありますが、中国以外での感染者が急増していることから、世界的流行が懸念されているところです。日本政府は、指定感染症に指定するとともに感染者数、感染経路が不明の市中感染者数の増加に鑑み、2月25日に「大規模イベントの延期、規模の縮小要請」「子どもの健康安全を第一に小、中、高等学校の休校要請」「PCR検査に医療保険の適用」「あらゆる可能性を想定した立法措置」などの基本方針を示しました。

 一方、世界保健機関は2月28日、世界全体の危険性の評価を中国と同等の「非常に高い」に引き上げ、世界的流行の認定に至り、事態の拡大局面が継続しております。一日も早い終息を願っているところですが、福島県内でも、政府からスポーツや文化イベントの自粛を要請されたことを受け、中止や延期が相次いでいます。双葉町としても「双葉町新型コロナウイルス感染症対策基本方針」を作成し対応にあたっており、小、中学校の臨時休校をはじめ必要な感染予防対策を講じることができない町主催のイベントは、原則として感染の終息が確認されるまでの間、中止や延期、規模の縮小等の措置をとってまいります。

 また私たち自身も手洗い、うがい、アルコール消毒、マスクの着用など、基本的な予防対策を身に着けることが感染予防につながるものと考え、機会あるごとに予防対策の徹底を啓発してまいります。

 さて、明日で震災から9年が経過いたします。明日11日はいわき市内において「東日本大震災双葉町追悼式」を規模の縮小、会場でのマスクの配付、アルコール消毒液の設置など感染症予防対策に万全を期して挙行いたします。

 東日本大震災によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、改めて多くの尊い命が失われたことに深い哀悼の意を捧げてまいります。

令和2年度は、私が町長に就任してから二期目の最後の年であるとともに、双葉町復興まちづくり計画(第二次)の総まとめの年となります。先週3月4日、双葉町で初となる、一部区域の避難指示解除を実現することができました。ここまでこれましたのも、議会の皆さま、町民の皆さまのご理解・ご指導の賜物です。この場を借りて御礼を申しあげます。

 

 さて、令和元年度は、平成29年9月に認定された特定復興再生拠点区域復興再生計画に基づき、国により特定復興再生拠点区域内の除染並びに被災家屋の解体が行われる一方、双葉町も復興まちづくり計画(第二次)に基づき、「町民一人一人の復興」と「町の復興」を基本理念として、復興・復旧に関わる各種施策の具現化に取り組んでまいりました。

 その結果、先ほど申し上げました通り、3月4日には浜野、両竹地区の避難指示解除準備区域とJR双葉駅周辺等の一部区域の避難指示が解除され、特定復興再生拠点区域内の立入り規制が緩和されました。この措置に合わせ、双葉町コミュニティーセンター内に双葉町役場コミュニティーセンター連絡所を開設し、およそ9年ぶりに、町内での役場業務を再開させました。

 7日には、整備を進めていた常磐自動車道常磐双葉インターチェンジの供用が開始されました。開通にあたっては、安倍総理大臣や赤羽国土交通大臣にもご来訪いただきました。安倍総理には、今般の避難指示解除は、あくまで復興のスタートであり、これから本格的に復興施策を具体的に進めていく必要がある旨、ご理解いただいたものと考えています。

 そして、14日には、JR常磐線が全線運転再開し、双葉駅も、東西自由通路を兼ね備えた新しい駅舎に生まれ変わります。東京と仙台を結ぶ特急列車が双葉駅にも1日上下線3本ずつ停車するほか、普通列車は1日各11本停車いたします。

 

 さらに駅東側には、地権者の皆さまの御協力の結果、新たな駅前広場の整備が実現しました。インターチェンジにせよ、JR常磐線にせよ、整備された交通インフラの効果を最大限に発揮させ、復興の大いなる推進力とする必要があります。そのためには、町や町民の皆さまによる上手な利活用が重要であると考えております。

 また、今年は7月から東京オリンピック・パラリンピックが開催される日本の歴史に残る記念の年になります。3月26日には双葉町でも駅周辺において聖火リレーが行われます。これまでいただいた国内外からの多くのご支援に感謝するとともに双葉町の現状を発信して、聖火がさらなる双葉町の復興へつながる希望の灯りになることを期待しております。

 

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される7月には、福島県が整備を進めているアーカイブ拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」が開業予定です。また、隣接して町が整備している産業交流センターについてもおおむね計画通りに建設工事が進んでおり、東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、伝承館、産業交流センター、復興祈念公園の一部が、一体的にオープンできるよう、調整を進めております。3つの施設の連携により、震災の記憶を伝承し、復興への思いを伝える発信拠点としての魅力を高め、双葉町に関心を持っていただける関係人口の増大を図ります。

 さらに、企業の事業再開や誘致を進めている中野地区復興産業拠点の整備や立地は、現在順調に進んでおります。現時点で、12件17社の企業の進出が決まっており、昨年12月には第1号となる企業の操業が開始されました。さらなる立地を目指すとともに、立地を決定していただいた企業の皆さまの円滑な事業開始を、責任もってサポートしてまいります。

 また、中間貯蔵施設整備事業についてでありますが、環境省は、県内に仮置きされている除去土壌等について、帰還困難区域を除き、令和3年度までに概ね搬入完了を目指す方針を示しております。令和2年度も身近な場所からの仮置場の解消を目指し、前年度と同程度の量が搬入される予定であります。輸送のための多くの交通量が予想され、交通事故防止のためにも道路整備が不可欠でありますが、双葉町における輸送ルートとしての農道原田・前田線の整備や町道山田・郡山線の改良工事、富沢橋の架け替え工事については今年度中に完了して供用開始されており、輸送に伴う安全対策に大きく寄与するものと考えております。

 また、細谷地区に建設を進めておりました仮設焼却施設並びに灰処理施設については、2月27日に火入れ式が行われ、稼働が開始されました。今後、町内の建物解体や除染等の可燃物の処理に大きく寄与するものと考えております。 

 これまで申し上げた通り、復興に向けて着々と取組みを進めてきているところですが、あくまで、避難指示の解除はゴールではなく、復興に向けたスタートであり、町内環境はもとより、避難の長期化によって、町民の皆さまの健康、仕事、暮らしなど、様々な面で多くの課題が山積しているのも事実です。町民の皆さまの生活再建こそ最重要課題であり、「町の復興」と「町民一人一人の復興」は両輪で、引き続き全力で取り組んでまいります。

 また、特定復興再生拠点区域の避難指示解除を実現できても、町域の約8割以上は、帰還困難区域のままであり、解除の見通しがまだ立っていません。さらには、福島県全体の復興のため中間貯蔵施設を受け入れるという苦渋の判断をしております。町域全域の避難指示解除なくして、町の復興・再生はなしえません。全域の解除と復興の実現まで、国が責任を持って全力で取り組んでいただくよう、今後も強く、国に要請してまいります。

 

以上を踏まえ、令和2年度に重点的に取り組む施策について申し上げます。

 

 まず、避難指示解除を実現したエリアに、町の復興の推進力となるよう、中野地区復興産業拠点における企業立地の促進を行うとともに、次に挙げる施策を進めます。

 第一に、双葉町産業交流センターにつきましては、7月に開業させるべく、最終準備を進めます。貸事務所における企業立地の推進、飲食店舗や物販店舗のオープンにより、人の流れの創出を図ります。

 また、産業交流センター単体の整備では不十分です。隣接して、福島県によりアーカイブ拠点施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」、および復興祈念公園の一部の整備が進められています。産業交流センターと、これらの施設を一体的に開業させ、相互の連携を密にすることにより、双葉町に関心を持っていただける方を増やし、復興ツーリズムの形成による交流人口拡大を目指します。

 第二に、中野地区復興産業拠点は、全線運転再開するJR常磐線双葉駅からは、約2kmと距離があります。交流人口拡大のためには、自家用車に依存した社会ではなく、公共交通によってアクセスしやすいまちづくりを図る考えであります。

 そのため、産業交流センターの開業に合わせ、双葉駅から中野地区との間に、シャトルバスの運行を開始したいと考えております。また、公共交通の新たな形として、多くの皆さまが共有しお使いいただけるコミュニティサイクルの設置や、カーシェアリングサービスの誘致を目指します。公共交通によって移動しやすいまちづくりは、国道6号の渋滞緩和に資する他、二酸化炭素排出量やエネルギー消費量を削減し、環境にやさしくかつ便利なまちづくりとして、双葉町の新たな魅力となるものと考えております。

 第三には、避難指示解除区域や特定復興再生拠点区域内において、双葉町の基幹産業である農業の再開を推進します。

 特定復興再生拠点区域内の農地についてでありますが、耕作再開モデルゾーンの長塚、羽鳥地区においては、昨年から除染が実施されておりますが、未除染となっている地区においても順次実施されることになります。そして、環境省が行う農地の除染と連携して、保全管理組合を組織し、除染後の農地等の保全管理や作付け実証など、営農再開に向けた取組みを切れ目なく支援してまいります。

 避難指示が解除された両竹地区においては、先行して保全管理組合による農地の保全作業が行われており、加えて昨年は、震災後初めてとなる野菜の試験栽培に取り組んだところでありましたが、台風19号の影響により中断してしまったため、令和2年度に再度取り組んでまいります。

 また、昨年8月には株式会社舞台ファームと「農業に関する包括連携協定」を締結し、この一環として、将来的な営農再開に向けた計画である営農再開ビジョン策定を舞台ファームとの協同で取り組んでおり、座談会などを開催しながら、農業者の皆さまのご意見、ご意向を伺ったところであります。

 このように、将来的な営農再開に向けた取組みを進めているところでありますが、農業者の高齢化、後継者不足や風評被害等課題が山積しており、引き続き、国、県、関係機関と連携しながら、ソフト・ハードの両面から営農再開するための環境整備に取り組んでまいります。

 さらに農業部門の体制を強化し、営農再開の推進や農業用施設の復旧などを加速させるため、令和2年度から産業課を農業振興課に改めるなど行政組織の見直しを行ってまいります。

 一方、避難指示解除区域や、立入規制緩和区域における、町民の皆さまのご不安にも対処いたします。立入り規制緩和に伴い、通行証なしに誰もが特定復興再生拠点区域内に24時間立入りが可能となっていることから、令和2年度は町内パトロール体制の強化と引き続き防犯総合システムの整備を実施してまいります。

 さらに令和元年度に引き続き、幹線道路の防犯灯等の改修を進め、防犯対策を進めてまいります。

 

 そのうえで、特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除、および居住開始目標を、令和4年春頃としております。それに向けた環境整備を、着実に進めてまいります。

 

 第一に、特定復興再生拠点区域内の生活インフラ整備を早急に進めます。上水道については、配水管の整備後に既設管を修繕しながら各家庭の前まで給水できるよう復旧してまいりますが、双葉駅西地区については上水道整備を含めた一団地整備事業が令和3年度までに実施される見込みです。 

 下水道についても令和4年春頃までに供用できるよう、処理場建設、管路の災害復旧の実施工程表を作成し計画的に整備、復旧を行ってまいります。

 

 また、アクセス機能強化及び安全性、利便性の向上を図るため、町道改良事業や災害復旧事業により幹線町道の復旧を行ってまいります。

 

 第二に、役場機能の本格再開に向け準備を加速します。令和4年春頃に役場機能を本格再開するべく、JR双葉駅の東側で既存公共施設の活用を前提に、まずは双葉町コミュニティーセンターを活用することを基本に、東口駅前広場に、役場として必要最低限機能できるような簡素な庁舎を段階的に整備する案を中心に検討を進めていくため、新庁舎整備基本構想策定に取り組んでまいります。

 

 第三に、教育の再開に向けても、準備を具体化します。令和2年度中に仮称「学校在り方検討委員会」を設置し、学校再開に向けた具体的な取組みを議論していく考えです。 なお、公共施設の被害状況は、環境省基準によるとほとんどの施設が「半壊」の判定であり、今後の対応については、令和2年度において復旧調査を行い、利用の可否の判断を行い、利用ができない施設については、解体を行ってまいりたいと考えております。

 第四に、双葉駅西側地区の新たな生活拠点の整備を推進します。いわゆる「駅西」は、避難指示解除とともに町開きし、帰還や居住を希望される方が、集まって生活することができる、駅前に広がるコンパクトな拠点です。中野地区とともに、双葉町の復興を牽引する最重要な拠点であり、駅西のまちづくりを成功させることが、まちなか再生ゾーンをはじめ、双葉町全域の復興につながります。

 そのため、駅西は、双葉町の将来像を先取りし、地方創生のモデルを示す、帰還したくなる持続可能なまちづくりを実現します。例えば、電線地中化の推進や、スマートコミュニティ形成による災害に強いまち、エネルギー自立性が高く、地域内資金循環を実現できるまち、次世代モビリティによる移動支援を受けながら、自家用車に頼らず、自らの足で楽しく出歩くことができる「ウォーカブルタウン」のまちを目指します。それらの実現により、二酸化炭素排出量やエネルギー消費量を削減し、環境にやさしくかつ便利なまちづくりを図り、双葉町の新たな魅力を発信します。

 そのうえで、駅西のまちづくりをモデルとして、令和4年春頃の解除以降の双葉町のあるべき将来像を具体化し、取り組むべき施策をとりまとめる復興まちづくり計画(第三次)の検討に着手します。計画の策定にあたっては、双葉とのつながりを保ちたいとおっしゃってくれている町民の皆さまや、若い世代の町民の皆さまはもとより、立地企業の皆さま、震災前に双葉を離れたけれども、震災をきっかけにふるさと双葉に何らか関わりたいと考えてくださっている方、双葉とはゆかりがなくとも、双葉を応援したいと考えてくださっている方なども含め、多様な方々を巻き込んだ、活発な議論を行いたいと考えております。

 また、まちなか再生ゾーンの再生に向けて、地域の方々が中心となった議論を活発化させたいと考えています。

 

さらに、町民の皆さまの「生活再建」を図るべく、家屋の被害認定調査については、特定復興再生拠点区域内における生活環境の整備や住宅再建、生活再建には欠かすことのできない重要な調査でありますので、迅速な事務処理を図ってまいります。

 また、納税環境向上のため、ゆうちょ銀行を含む各金融機関及びコンビニエンスストアでの収納に対応した様式を作成し、令和3年度に運用開始できるよう、設計・プログラミング等に係る業務を実施して、町民の皆さまの利便性の向上に努めます。

 

 私たちが不安なく避難生活を送るために必要な施策として、医療費一部負担金等の免除と高速道路通行料金の無料措置があります。高速道路通行料金の無料措置については、新たに発行された「ふるさと帰還通行カード」により、2020年度も引き続き無料措置が講じられました。

 医療費についても一部負担金等の免除期間が1年間延長になりました。今後も町議会の皆さまと連携を図りながら、引き続き国に強く要望を行ってまいります。

 

 また、「町民のきずな・結びつき」の確保を図ることも最重要であり、避難生活の長期化に伴う町民の心身の健康の維持やコミュニティの形成、生きがいづくり等に向けた各種事業も継続して実施していくこととしています。

 長期にわたる避難生活の中で、最も重要なことは、町民の皆さまが健康で生き生きとした生活を送ることです。そのため総合健診の受診率の向上を図るとともに、疾病予防の取組みを強化して健康増進に努めてまいります。

 令和2年度も引き続き各種情報発信ツールを活用し町行政と町民、町民相互のきずなの維持、コミュニティの充実を図ってまいります。また令和元年度より開始したユーチューブを通じて町の情報を全世界に配信するグローバル配信も継続して行ってまいります。

 さらに、町民相互の交流機会の確保と各行政区におけるきずな・結びつきの維持を図るため、行政区総会開催における経費の一部を継続して助成してまいります。

 生活サポート補助金については、避難生活の下支えとして町民同士のきずなの維持の一助となるよう継続して取り組んでまいります。

 

 将来の双葉町を担う小・中・高校生の再会の機会の創出と、児童・生徒同士及び保護者同士のつながりときずなの維持発展のため、今年度は9月頃に「集まれ!ふたばっ子2020」を開催してまいります。

 また、昨年は台風接近のため中止となったスポーツフェスティバルですが、このイベントは多くの町民の皆さんがスポーツを通して運動不足を解消するとともに、再会を楽しむなど、町民同士の「きずな・結びつき」に大きな役割を果たしていることから、令和2年度も開催してまいります。

 

 長期避難により地域のコミュニティが失われ、先人から受け継がれてきた伝統文化の伝承が困難な状況になっております。伝統芸能は、地域の結束力を高める要でもあり、消滅させることなく次世代に繋いでいくために、民族芸能伝承事業を推進してまいります。

 

 以上、令和2年度の主な取り組みを述べましたが、町政運営にあたりましては、引き続き町民の皆さまのご意見をお聞きし、議会と連携を図りながら双葉町復興まちづくり計画(第二次)の検証を進めながら、復興まちづくり計画(第三次)の策定や各種復興事業に向けて職員一同全力で取り組んでまいりますので、議員各位並びに町民の皆さまの一層のご理解とご支援を賜りますようお願いいたします。

 

 双葉町長 伊澤 史朗